肝胆膵とは

消化管をサポートする働きをする臓器として、肝臓、胆のう、膵臓を総称した呼び名が肝胆膵です。

肝臓に関しては人体の中では最大の臓器であり、右上腹部にあります。その働きとしては、食事等で摂取した糖質、タンパク質、脂質等の代謝、有害物質の分解(解毒)、胆汁の生成を行います。

胆のうは、肝臓の真下に位置した袋状の臓器です。肝臓で作られた胆汁を蓄えていて、脂肪分が多いとされる食物の消化をサポートするために排出されます。

膵臓は、胃の後ろ側に位置ししている臓器で、消化液やホルモン(インスリン)を分泌しています。消化液は、食物を消化しやすくするために分泌し、インスリンは食事をすることによって上昇した血糖値(血液中に含まれるブドウ糖の濃度)を下げる効果があります。このインスリンが作用不足を起こすと血糖値は慢性的に上昇したままとなります。この状態を糖尿病といいます。

これらの臓器に何らかの異常や病気があった場合も消化器内科の診療範囲となります。

肝胆膵の主な病気

肝炎

肝臓に炎症を引き起こしている状態を肝炎といいます。原因は様々でウイルス性をはじめ、アルコールまたは過食(非アルコール性)、薬物の服用、自己免疫などです。さらに何の前触れもなく発症するケースは急性肝炎、肝炎の状態が6ヵ月以上続いている状態を慢性肝炎、急性肝炎の症状が急激に悪化した状態を劇症肝炎といいます。

ウイルス性肝炎については、A~E型まで5つのタイプがあるとされますが、多くはA~Cの3つのタイプによるもので、D型とE型は日本ではまれとされています。感染経路ですが、A型は経口感染(生水や生貝 等)、B型とC型は血液感染(B型は性交渉、母子感染 等、C型は注射の針等の刺し事故 等)となっています。急性(ウイルス性)であれば、安静にしていれば4~8週間程度で治癒するようになります。慢性化しやすいのがB型とC型です。

主な症状ですが、急性では、発熱、嘔吐・吐き気、食欲不振、全身の倦怠感、腹痛(肝臓がある部位)等がみられることがあります。慢性肝炎については、自覚症状が出にくく、放置が続けば肝臓の線維化が進行し、肝硬変や肝細胞がんの発症リスクを上昇させますので注意が必要です。

肝硬変

B型およびC型の慢性肝炎に罹患したことのある方、多量にお酒を飲む方が発症しやすいとされる疾患です。肝臓に慢性的な炎症が引き起こされると肝細胞が減少し、肝臓の線維化が進むようになります。これが肝臓全体に広がって、肝臓そのものが硬くなってしまうと肝機能が著しく低下していきます。治癒することはありません。

原因については、ウイルス性肝炎(主にB型、C型)やアルコール性だけでなく、薬剤性、自己免疫性、胆汁うっ滞性、非アルコール性(NASH、MASH)などによって発症することもあります。

発症間もない頃は無症状なこともありますが、病状が進行すると、全身の倦怠感、腹部の膨満感(腹部に水が溜まる)、むくみ(浮腫)、食欲不振、嘔吐・吐き気、黄疸などが現れるようになります。このほか、肝細胞がんを発症させやすくするということもあります。

胆石症

胆汁の通り道である胆道で胆汁の成分が固まるなどして作られた結石によって引き起こされている様々な症状がみられている病気のことを胆石症といいます。胆石については、胆汁内のコレステロール成分が多くなる、カルシウムにピリルピンが結びつくなどして固まるようになります。胆石が発生している部位によって、胆のう結石、総胆管結石、肝内結石と呼ばれますが、なかでも胆のう結石の患者様がよく見受けられます。中高年世代に発症しやすいのも特長です。

主な症状ですが、食後に右の脇腹付近が痛くなる、みぞおちが痛む、嘔吐・吐き気などがみられます。なお胆のう結石の患者様では、無症状なケースも少なくないです。

胆のう炎

胆のうで何らかの細菌(大腸菌等の腸内細菌)に感染にして炎症を起こしている状態が胆のう炎(急性胆のう炎)です。原因のほとんどが胆のう結石によるものとされています。この結石(胆石)が胆のう管で詰まって、胆汁の流れが悪化すると細菌に感染しやすくなるとされています。

よくみられる症状は、発熱、腹痛(右上腹部)、嘔吐・吐き気、マーフィー徴候などです。炎症が進行すると胆のうに穿孔がみられるほか、急性腹膜炎や胆のう周囲潰瘍なども現れるようになります。ちなみに炎症を繰り返すと胆のうの内壁が厚くなるなどして、委縮化が進みます。そうなると胆のうの機能が機能低下を引き起こすようになるのですが、この状態にあると慢性胆のう炎と診断されます。

膵炎(急性・慢性)

膵臓に炎症がみられている状態で、急性膵炎と慢性膵炎があります。

急性膵炎は、膵臓が作り出す消化液(膵液)によって、膵臓やその周囲の臓器が損傷を受けている状態をいいます。通常であれば、分泌される膵液によって膵臓等がダメージを受けることはありませんが、大量の飲酒、胆石、腹部に外傷を負うなどすることで発症するようになります。中高年世代の男性が発症しやすいです。主な症状ですが、上腹部や背部に持続的な痛みがみられます。そのほか、嘔吐・吐き気、発熱、食欲不振なども現れるようになります。多くは基本的治療で治癒しますが、重症化すると死亡することもあります。

一方の慢性膵炎は、長期に渡って膵臓で炎症を繰り返すなどすることで、膵臓の実質細胞が脱落し、線維化や石灰化がみられている状態です。原因はひとつではありませんが、長期的にアルコールを大量摂取する中高年男性の患者様が多いです。発症初期(代償期)は、上腹部痛や背部痛のほか、吐き気・嘔吐、食欲不振、腹部にハリなどもみられます。なお病状が進行する(非代償期)と腹部痛などは現れなくなりますが、膵臓機能は低下していきます。これによって、消化吸収障害(下痢や脂肪便が出やすくなる 等)や糖代謝障害(糖尿病の発症リスクが上昇する 等)による症状が見受けられるようになります。